ジュリアン有生の「徒然なるページ」

2004年4月21日

 

第56回 よっちゃんの自己責任

ここ数日、わが親族間ではイラク人質事件に関して、昼夜を問わずの白熱の議論が展開された。

数日前、お昼間にジュリアンがよっちゃんに電話して

「ねぇ〜、やっぱ危険な所に自分から行っちゃダメだよね〜」というと、よっちゃんも「そうよね。ダメよね」なんて言っていた。

その会話を、夜遅く仕事から帰ったお兄ちゃまによっちゃんが話したのが始まりだった。

その話の内容を聞いたお兄ちゃまは「そこだけを捕らえて人質達だけを攻める議論をしちゃダメだよ。どうして、イラクがそんなに危険な所、日本の一般人が人質になるような国になったのか、それは誰の責任で、それに加担したのは誰なのか、そういった事が根本原因だよ」

それをまたまた次の日のお昼間に、よっちゃんがジュリアンに言ったものだから、ジュリアンも更に反論。「違うわよ!それはそれで、この戦争の審議は別なのよ。要は、今世間で議論になっているのは、危険だと分かっていて、政府から避難勧告が出て、自衛隊が国の代表として出向いている所へ、自ら行っちゃダメっていう議論なのよ」

それをまたまたよっちゃんがお兄ちゃまに。するとお兄ちゃまもまたまた反論。「違うってば!危険な所に行った人はそれなりに自己責任だって問われるだろうし、それは意義を申し立てないよ。オレが言ってるのは、例えば江角マキコの問題の時だって、江角だけが矢面に立つ形で会見していたけど、じゃあ江角を起用した人達に落ち度はなかったのか、という点に関しては、その関係者達は記者会見なかったじゃないか。今回も人質の自己責任をこれだけ世間で騒ぐなら、もっと前の段階で、イラク戦争が起こる時、自衛隊が派遣される時に、もっと国民は声をあげた方が正論なんじゃないかって事だよ。人質事件の方が、イラク戦争の根本の論争より、世論が騒いでるのはおかしいよ。」

反論、反論の応酬で、まさによっちゃんという仲介者を挟んで親族間でのテレフォン戦争と化したのであった。

お昼間は、ジュリアンから自己主張をトクトクと言って聞かされ、夜は夜でお兄ちゃまの自己主張をトクトクと言って聞かされる事、数日間。

そして、昨日お昼間によっちゃんに電話をしたら、たまたまお兄ちゃまが家にいた時だったのだけれど、よっちゃんは言った。

「よっちゃんね、もう何が何だかわからなくなってきたわ〜。お兄ちゃんとジュリちゃんの間に挟まれて、よっちゃん、もう、わかんない。昼は昼で聞かされ、夜は夜で聞かされ、頭がおかしくなりそうだわ〜!!」

すると、電話口からジュリアンが、そして電話の向こうにいたお兄ちゃまが、同時に口をそろえて言った。

「それが(兄妹を産んだ)あんたの自己責任!!」

 

ひえ〜〜〜!!かわいそうなよっちゃん!!

 

そんな中、いつもゲストコメンテーターとして存在するダーだけが「お義母さん、かわいそうに。。。」と調停役に入ってくれるのであった。

よかったね、よっちゃん。ダーがいてくれて(笑)

 

ところで、ここで、またまた、自己主張なのですが。。。

高遠菜穂子さん、彼女は自分の存在価値・存在理由について長年悩んで、なかなかアイデンティティーが見いだせなくて、結果として、世界中で一番危険で困っている場所にいる人達を救う事でそれを見出そうとしていたのではないだろうか?だから、渋谷でもなく、他の発展途上国でもなく、たった今のイラクを選んだのではないだろうか?

そこで、彼女は日本では見出せなかった自分の存在価値・存在理由を見出し始めていたからこそ、必死になって最も危険な場所へと自ら向かって行ったのではなだろうか?

けれど、人質事件に遭遇し、本国から非難を浴び、彼女が見出し始めていたものは、実は世間的には自己完結型の慈善活動としてしか、みなしてもらえなかったという現実を突きつけられ、見出し始めていた存在価値・存在理由がこっぱみじんに砕かれてしまったから帰国後、日に日に歩けないほどに衰弱していったのではないのだろうか?

けれど、私は、この一連の事件が彼女にとって悪い結果ばかりをもたらしたとは思っていない。今回の事は、彼女がまず自分の事をこれ程に心配してくれる本当の家族がいるという事に気付く良い機会だったのではないだろうか。おそらく、自己の存在価値や存在理由に付いて悩んでいた時は、家族の愛には気付いていなかったのではないか、とジュリアンは思う。今回、これだけ世間が非難囂々騒いだ中で、弟さんの修一さんは終始その矢面に立ち、最後まで菜穂子さんをかばい続け、菜穂子さんの為に、日本中と戦っていた。叫び、頭を下げ、出迎えに行き、自宅まで付き添い、そうやって最後まで菜穂子さんを助けた。菜穂子さんの弟として、高遠家の長男として、彼は彼なりに全力で頑張っていたとジュリアンは思う。他のご家族の方々も、それぞれの精一杯で菜穂子さんのために叫び、頭を下げ、そして温かく菜穂子さんを迎え入れた。彼女は、これから、全くの白紙状態からまた改めてアイデンティティーの確立をしていかなければならないだろうが、そこに自分を愛してくれる家族がいる、という事をこれからは認識しながら生きていけるのではないだろうか?

早く元気になって、いつか、とても明るく前向きに生きている菜穂子さんの姿をマスコミが私達に伝えてくれる日が来ればいいな、と、ジュリアンはそう思います。

菜穂子さん、高遠家の皆様、勝手な事を書いてごめんなさい。

でも、ジュリアンは応援メッセージのつもりで書いているので許してね。

自己責任が騒がれた今回の人質事件で、ジュリアンは家族の大切さも痛烈に感じ、自分に家族がいる事が本当に恵まれた事なのだと改めて感じました。



<HOME>