ジュリアン有生の「徒然なるページ」

第41回 ダーリンとジュリアンの結婚行進曲

<最終章  泣かないお嫁さま>

 

遂に結婚式当日がやってきた。

午前11時からの挙式の為、ジュリアンはピンクのスーツを着て、朝6時半に家を出た。

ジュリアンは、「今日は絶対泣かないぞ」と自分の心の中で決めていた。

この日の為に生まれてきた、と思っていたジュリアンは、泣いた事でお化粧が崩れるのがイヤだったのである。どの写真にも綺麗にお化粧が載ったままのお顔で撮影されたかったのである。

さて、会場となっていたホテルに着いて驚いた事には、控え室が新郎と新婦が同じ部屋だったのだ。いくら今時の事だからって、ここのホテルは考え方がちょっと先走りすぎと言うか、露骨すぎというか。。。と思ったが、控え室に入った途端から、もう大忙しで、ダーリンが側にいるから着替えにくいなんて言っていられない状況になった。ウエディングドレス、白無垢、色打掛、カラードレスの順番だったので、お色直しばかりしていた様に思う。

そして、ウエディングマーチに上手くステップを合わせられなかったものの、何とか滞りなく挙式を終え、披露宴の時間になった。

この日のためにジュリアンは4人の方々に「祝辞」をお願いしていた。それまで自分が招かれて出席した披露宴では、ただ眠いだけのお話しに過ぎなかった祝辞だが、自分の披露宴では他の事に気をとられる事なく、真剣に祝辞に聞き入った。祝辞を述べて下さった方々が今日のこの日の為にいかに考えに考えて来て下さった文言かが、よく分かり、どの方の祝辞も心に染み入った。

ちょっと変わったパターンではあるが、父のいないジュリアンの披露宴の挨拶のトリはお兄ちゃまが務めることになっていた。オオトリがダーリンという構成だった。

お兄ちゃまは来賓の皆様への一通りのご挨拶の後、こう言った。

「お食事もコーヒーが運ばれる時間となりました。私は予備校講師という職業柄、人前で話すのが長いように思われがちなのですが、実は日頃はそうでもありません。が、今日は皆様が大変退屈される事を承知の上で、長く長くお話しさせて頂きたいと思います。そして、1分でも1秒でも長く、妹に今の姿でいさせてやりたいと思います。皆様には大変申し訳ございませんが、どうか今日1日だけ、私の長い長い話しにお付き合い下さい。・・・ ・・・」

その言葉を聞いた途端、それまで泣かなかったジュリアンの目に熱いものが込み上げてきた。兄はそれから20分程話しをした。でも、ジュリアンは泣かなかった。泣かないで、しっかりと今日のこの日の兄の言葉を心に刻み付けなければ、必死でそう思っていた。

披露宴が終わり、2次会は別の日に予定していたので、ホテルのティーラウンジでダーリンとジュリアンのお友達数人でお茶を飲み、その日の宴は終了した。

ダーリンとホテルの部屋に入り、お花や当日使った巨大ロウソク等を部屋の隅に整理していると、当日ポラロイドカメラで一人一人を撮影し、そこに一言ずつメッセージを書いていただいた写真の入った箱が出てきた。1枚、1枚何気にジュリアンが見ていると、お兄ちゃまのが出てきた。そこには「色々ありがとう。たまには遊びにおいで」と書かれていた。

その写真とそこに書かれたメッセージを見た時、ジュリアンの目にはもう涙が今にも溢れそうになっていた。

そして、その時、窓辺の椅子に腰掛け、その写真を手に泣き出そうになっていたジュリアンを、ダーリンが後ろからそっと抱きしめてくれた。

両手でしっかりジュリアンを抱きしめながらダーリンは言った。

「どんな事があったって、絶対最低限食べさせていってやるからな!」

その言葉で、もうこらえ切れなくなり、ジュリアンの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。

泣かないお嫁さま、ジュリアンは、この日最後の最後に大粒の涙をこぼした。





<第41回のあとがき>

「徒然なるページ」初の連載形式を最終回までご拝読いただき、ありがとうございました。

ジュリアンは、占い師という職業柄、恋愛・結婚に関するご相談を数多くお聞きしております。今回の「ダーリンとジュリアンの結婚行進曲」を書き記すにあたり、相当迷いました。最終的に書こうと決心いたしましたのは、これまでの恋愛経験などから、本当は結婚を強く望んでおられるにも拘らず、結婚に対して素直に前向きになれない方や、もう諦めた等とおっしゃる方々に、「こんな突然の結婚もあるのですよ。だから後ろ向きになんてならないで。諦めたりしないで。」というジュリアンからのメッセージを込めて書かせて頂きました。人生に於いても、結婚生活に於いても、まだまだ未熟なジュリアンですが、どんなに辛くても、どんなに悲しい事があっても、前を向いて歩んでいると必ず何らかの形で道は開けてくると思いますし、また、そう信じたいと思っています。とりわけ、「結婚」に於いては「いつ」より「どんな」が大切だと思います。

2人で生きていくという事は、素晴らしい事だと思います。どうか、諦めないで、自分にとっての素晴らしいパートナーとの出会いを求め続けてください。

ジュリアンの占いが、そんな皆様のお役に立つことが出来るなら、ジュリアンは鑑定士として幸福の極みです。これからも皆さんの幸せ探しのお役に少しでも立てます様、頑張りますので、皆さんも頑張ってくださいね。           

ジュリアン有生

 

 

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