ジュリアン有生の「徒然なるページ」

5月22日

 

第32回 強い強い強い、ジュリアンのおにいちゃま

 

この「徒然〜」に関するご意見・ご感想等多々頂いている中で、第10回「後ろ盾」に関するものが多く、「もっとお兄さんの事聞きたいです」との声にお答えいたしまして、今日は兄がジュリアンの後ろ盾になった日の事を書こうと思います。

ジュリアンの両親は、ジュリアンが幼い頃よく夫婦喧嘩をしていた。二人とも火の星座の人なので、喧嘩になると猛烈だった。

ある日、またまた夫婦喧嘩が始まった。その日の喧嘩はまた格別で、兄とジュリアンは家の中にいられない状態となり、兄がジュリアンの手を取り、二人で外へ飛び出した。真冬の夕暮れ時、行く当てもなく途方に暮れ、家から徒歩10分程の所にある公園へ辿り着いた。二人でブランコに座っていた。突然飛び出したので、兄はジャンパーを着ていたが、ジュリアンはセーターのままだった。兄が、自分のジャンパーをジュリアンにかけようと隣のブランコからこちらへ寄ってきた。すると、ジャンパーからチャリンという音がした。兄がポケットに手を入れると20円が出てきた。寒くておなかも空いていたジュリアン達は「ヤッター」という気持ちになり、公園沿いにあった美味しいコロッケ屋さんに走っていった。兄が「コロッケちょうだい」と言って20円を渡すと、閉まりかけていたが、コロッケ屋のおじさんは、コロッケを揚げてくれた。そして兄に「はい」と言って渡してくれた。ジュリアンが次は自分が手渡してもらえると思い、おじさんを見ているとおじさんは言った。「ごめんね。昨日までは1個10円だったんだけど、今日からは1個20円なんだよ〜」

兄が1個のコロッケを持ち、ジュリアン達はブランコへ戻った。少しの間、兄はコロッケをじっと見ていた。そして、ブランコから立ち上がり、ジュリアンに差し出した。「これ、お前が食べ」ジュリアンは少し迷ったが、おなかも空いていたし、そのコロッケを一口かじってしまった。温かくて美味しいコロッケの味が口の中いっぱいに広がった時、いけない、と思った。そして「ううん、一口かじっちゃったけど、やっぱりこれおにいちゃんが食べ。だって、これおにいちゃんのお小遣いで買ったやつやもん」すると兄は怒ったように「アホか!俺はなァ、小学生なんや。小学生言うたらもう大人や。大人は寒くないねん。お前も小学生になったらわかるわ。お前は幼稚園やねんから、寒いから、お前が食べなあかんねん」と言い、ジュリアンにコロッケを全部食べさせてくれた。

この日、この時から兄はジュリアンの後ろ盾になった。

おなかが良くなったジュリアンは今度は、日がどっぷり暮れてしまった暗い公園が恐くなった。「おにいちゃん、こわい〜」と言うと、兄は「ほな、そろそろ帰ってみよか」と言い、ジュリアンを連れて家へ戻った。

家へ戻ると「あんたら、どこ行ってたん!?親を心配させて!!」と夫婦そろって玄関に飛び出してきてジュリアン達は怒られてしまった。二人は夫婦喧嘩なんてなかったかのような仲の良さだった。

今思えば、何て身勝手な親なんだ!

太陽・月両方を牡羊座に、火星を獅子座にもつ兄は、元々は気性の激しい性格でこの件があるまではジュリアンとよく喧嘩をしていたが、この日以降、兄妹喧嘩はなくなった。

大人になり、初めて映画「火垂の墓」(ほたるのはか)をテレビで見た時、映画自体も泣けるストーリーだったが、兄とジュリアンは、主人公の兄妹と自分たちの幼い頃がダブり、もう涙ウルウルになった。もちろん、一緒に見ながら、ティシュで涙を拭いているよっちゃんを横目で睨みながら、である。


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